まちづくり情報館の「人権の目」
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人権の目
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2018年07月30日 10:08
「声なき声を~富山型デイの根源~」

 私の働いている職場は富山型デイサービスと呼ばれています。富山型デイサービスを最初に作ったのは、日赤病院で長く看護師をしていた惣万佳代子さん。病院のベッドの上で「どうして畳の上で死ねんがけ?」と息を引き取っていくお年寄りの姿を見て、仲間とともに、平成5年に立ち上げたのが富山型デイサービスの元祖「このゆびとーまれ」です。これを機に、富山県内外に広がりました。そして、私も平成9年3月に自宅を開放し、富山型デイサービス「にぎやか」を立ち上げました。
 富山型は他のデイサービスとは大きく違う特徴があります。一般的にデイサービスというと、お年寄りが通うイメージが強いと思いますが、富山型は高齢者だけでなく、赤ちゃんからお年寄りまで、障がいの有無を問わず誰もが利用できます。これが当時はとても珍しく画期的な取組でした。なぜなら、それまでは身体が不自由な人は身体障がい者施設、心が不自由な人は精神障がい者施設、65歳以上であれば老人施設といったように、同じ人間なのに、同じ障がいや高齢というだけで一カ所に集められることが一般的に良いと思われていたからです。地域にはいろいろな人が居て当たり前です。いろいろな人が困ったときに身近にいつでも利用できる場所であり、障がいがある人も、ない人も、お年寄りも子どもも同じひとつ屋根の下で支え合って生活できる場所、それが富山型デイサービスの魅力です。
 「にぎやか」では今日もいろいろな人が一緒に一日を過ごします。産まれたばかりの赤ちゃんが泣いています。その子にミルクをあげているのは84歳の認知症のおばあちゃんです。「認知症の人に赤ちゃんを抱かせて大丈夫?」と心配するかと思いますが、お昼ご飯を食べた事、今日の季節、曜日がわからなくても、赤ちゃんを抱く手、赤ちゃんを見つめるまなざしはまぎれもなく母親です。人生において経験したものは忘れるどころか、年齢を重ねるごとに深まり、母親としての愛や思いやりは認知症になっても消えることはありません。おばあちゃんの温かな胸のなかで眠る赤ちゃん。時間に追われ忙しく動き回る私達スタッフではまねのできない、ゆっくりとした時の流れは神々しくもあり、その姿に私たちが癒されるほどです。
 また、身体障がいがあり、自分でご飯を食べられない人に3歳の子どもが一生懸命ご飯を食べさせようとスプーンを口に運んでいます。小さい頃からにぎやかで育った子どもたちは障がいのある人を特別視しません。できないことは手を貸し、できることは手を貸さない。そんな当たり前のことを自然にできるのは、小さい時から一緒にご飯を食べ、一緒に生活してきたからこその成せる業です。
 障がいが個性だとすれば、障がいがあるからと特別に優しく、丁寧に接する必要はなく、互いの個性を尊重し合った、対等な関係で接すれば良いだけなのです。でも、障がいがある人や認知症の人と接する経験が少ないと、人権を尊重しようとするあまり、「失礼があってはいけない」と話しかける言葉にも気を付けたり、「傷つけたりしてはいけない」とコミュニケーションもぎこちなくなるものです。
 人権を大切にするなら、障がいという言葉で先入観を持たず、ちゃんと目の前の人に自分をさらけ出し、向き合ってください。障がいという自分にない個性に興味をもってください。それが本来の人権を尊重することだと私は考えています。

NPO法人にぎやか理事長 阪井由佳子

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